失礼しますっ!

加藤シゲアキ君をえっさほいさ応援してみるブログ

妄想KAGUYA

昔々、竹取の翁というものがいました。
彼は生業として、山に行き竹を取って生計を立てていました。

ある日いつもどおりに翁が、山へ竹を取りに行ったところ、眩いばかりに光る竹を見つけました。

そんなはずはないと思い、翁は目を擦ってみるのですが、やはり竹は光っています。

「あなや!これはうつつか?」

思いながらも翁は、竹を割ってみました。
するとどうでしょう、竹の中にこの世のものとは思えない、美しい赤子が居るではありませんか!

翁は不安になりながらも、このまま放っておく事もできず、媼の元に連れ帰ったのでした。

見るやいなや、媼は喜びます。
元々、子の居なかった二人は
「これは天からの贈りものに違いない」
と思い、育てる事を決めました。

そしてこの美しい、竹から産まれた赤子には、「なよ竹のかぐや」という名が与えられました。

不思議な事に、このかぐやの成長は早く
半年あまりで、少女の歳になるまでにそだちました。

その間も、竹をとって生活をしていた翁でしたが、竹を割る度にその中から、金銀財宝が溢れ出し、みるみるうちに生活が豊かになり、都に移り住む事になりました。

この世のものとは思えないほど美しく成長したかぐやの噂は、瞬く間に広がり、下賤の男だけではなく、都の公達の間にまで、かぐやの話題で持ちきりになりました。

そんなある日、翁の元に身分の高い公達から文が届きます。
今までも、何通もの文は届いていたのですが、身分が卑しかったり、見目が悪かったりと、とてもかぐやに相応しくないような者ばかりだったので、読むともなく捨てていたのです。

翁は喜びました。
まさか、こんなにも身分の高い公達から文が届くとは思ってもいなかったので、舞い上がった翁は、すぐにかぐやに相談します。

「かぐやや、こんなにもたくさん、お前の事を気に入ってくださった方々から、文が届いたよ、読んでみないかい?」

かぐやは言いました。
「お爺様、私はイケメンが大好きにございます、その文の中から選りすぐりのイケメンをお選び下さいませ。それ以外の三下とは会いとうございませぬ。よよよ…」

「おー、そうかそうか。泣くではない、かぐやよ、それでは早速イケメンのみを選ぶとしよう。」

泣き出すかぐやを心配した翁は、都で評判のイケメン公達を選ぶことにしました。

そして選ばれたのが…

体つきが非常に美しく、少々抜けたところもありながら、大事なところでは大変頼りになる、優しさあふれる一重まぶたの男前小山大納言

おなごと見紛うばかりの美貌を持ち、寄ってくる女は星の数。都一の蹴鞠の名手として名高い手越皇子

甘いとろける様な和歌の読み声で、聞く者を夢の中に誘い、彼に魅了されたら最後、他の者には目もくれないほど虜にする、美丈夫増田右大臣

幅広い知識、溢れ出る才と美しさ。男女問わず魅了するその姿は、飛んでいる仙人ですら落下してしまうほど見惚れてしまう、加藤中納言

都で評判の四人が、かぐやの元へ集まりました。

求婚してくる四人のイケメンを前にかぐやは条件を突きつけました。

「わたくしに、歌を作ってきてくださいませ、一番素晴らしい歌を作って下さった方の、求婚をお受けいたします。三月(みつき)後にまたお越しください。」


そして三月(みつき)後…


再び四人のイケメン公達が、かぐやの元へ集まりました。

小山大納言は
「ろめを〜いにしえ〜」という曲を。

手越皇子は
「そなた」という曲を。

増田右大臣は
「聞いてくれぬか」という曲を。

加藤中納言
「従者のごとく」という曲を。

それぞれ、かぐやに作ってきました。
その歌のどれもが素晴らしく、四人全員に心を奪われてしまったかぐやは、悩み、月を見ながら涙する毎日を送りました。

そんな折、世の帝(じゃにいの帝)の元にも、美しいかぐやの噂が届きます。
じゃにいの帝は妻に娶ろうと、かぐやの元まで、共の者も連れずにやって参りました。

「美しいかぐや、私の妻になりなさい」
優しい声をかけながらも、無理に連れ出そうとする帝に、かぐやはこう言いました。

「じゃにいの帝様、お願いがございます。小山大納言、手越皇子、増田右大臣、加藤中納言の四方で、四人囃子をお作りください。あの方達の雅な歌は宝にございます。もし四人囃子をお作りいただけたなら、わたくしはあなたの妻になりましょう。」

喜んだ帝は早速、四人を呼びつけ
「ゆう達はこれより、四人囃子を結成することとする。その名も《にうす》じゃ。」
これが日本で初めて『あいどる』という職業が出来た瞬間でした。

この時すでにかぐやは、自分がなぜこの地に降りてきたのかを、思い出していました。
「お爺様、お婆様、今まで大変お世話になりました。この世でのお勤めを全うしたわたくしは、明日月に帰らなくてはなりません。」

「なぜじゃ?かぐや、お前のお勤めとはなんなのだ?」

泣きじゃくる二人にかぐやは言います。
「わたくしは月より参った、月の一族でございます。この世に《あいどる》なる者を作るために遣わされました。この世で最も美しく、才のある者達を選び出す。それが私のお役目でございました。明日は十五夜、月が一番輝く頃に、使いの者がわたくしを連れに参ります。」

驚いた翁は、そんな事はさせまいと、帝にお願いをし、都中の検非違使を屋敷の周りに配置し、万全の態勢で当日を待ちました。

そこに《にうす》の四人も駆けつけました。
「君のために僕は生きて、君のすべてになりたい。」と小山大納言。

「もしも願いが叶うならそばにきて…すべて捧げるから!」と手越皇子。

「幾重にも重なる思いよ…行かないでくれ。」と増田右大臣。

「僕は今からあなただけを、守っていこう!」と加藤中納言
かぐやの心は激しく動揺します。

そして、じゃにいの帝が言いました。
「かぐやよ、そなたの為にこの四人が歌を作ってきたぞ。その名も《KAGUYA》だ!」

四人はかぐやの為に、歌い踊りました。
その姿のなんと美しい事!かぐやのみならず、その場にいた全ての者が《にうす》に魅了されていました。

刹那、まばゆい光と共に、月の友達が舞い降りてきました。

「これで最後のお別れです。」
かぐやは言いました。

月の友達は、かぐやに羽衣を被せようとします。
一度それを振り払い月の友達に何事か囁くと、こう言いました。

「この羽衣をかけると、わたくしのこの世での記憶は無くなってしまいます。けれどこの美しい《KAGUYA》という歌を聴くたびに、わたくしはあなた達の事を思い出すことが出来るでしょう。どうぞわたくしが、この世から居なくなりましても、その歌を歌い続けてくださいませ。きっとその歌声は月まで届き、月の住人をも魅了するでしょう。わたくしは、あなた達の歌声が聴けるだけで、どこに居ても幸せな気持ちになれるのです。じやにいの帝様、お約束を守れず申し訳ございません、あなたはぷろでぃうす力に長けたお方…これからも《にうす》の四方をお願い致します。」

言い終えると、月の友達はかぐやにさっと羽衣をかけました。

じやにいの帝は、検非違使に矢を射かけよと命令しましたが、不思議なことにいかけた矢はことごとく折れ、飛んでいくことがありませんでした。

月の友達は「うっいぇーうっうっいぇー」の掛け声と共に、かぐやの周りに集まり、牛車に乗せようとしました、その時また四人の《KAGUYA》を歌う、悲しくも美しい歌声が響きわたりました。

その時、すでに記憶を無くしたはずのかぐやの目には、ひとすじの涙が流れていました…。
しかしすでにかぐやは牛車の中…誰もその涙を見る事は出来ませんでした。

そして、なす術もなく見送ることしかできない、翁、媼、にうす、帝全員の目に涙が光っていました。


その後、日本で初めてのあいどる《にうす》の噂は都中に広まり、その後の活躍は後の世まで語り継がれる伝説になるのです。




最後に…
かぐやはまだ一つだけ、誰にも言う事ができなかった秘密を抱えていました。その秘密とは、ただ唯一加藤中納言に心から懸想していたという事です…。

〜終〜